会社は誰のものかという議論があります。社長のもの、社員のもの、株主のものという話になっていましたが、個人的には役員や従業員も含めたその会社の構成員全員のものであると思っています。それぞれに役割があり責任の範囲というものがありますが、所属する人全員が自分の会社であるという意識であることで、社会に必要となり貢献できる会社になると思います。
ただ、会社規模が大きくなってくると、そんなことを言っていられない状態になるのかもしれません。『株主』という存在が大きくなってくるからです。小さな会社であれば、『株主=経営者』という場合が多いので、先の理屈は成り立つかもしれません。でも、世の中に大きな影響を与えてるのは大企業であり、この場合は『株主』のものという理屈が通ってしまうのかもしれないです。
ところで、日本のいわゆる大企業の株主構成をご存じでしょうか。私の仕事で関わりのある企業を例に挙げると
パナソニック
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 日本カストディ銀行(信託口)
- 自社(自己株口)
- ステート・ストリート・バンク・ウエスト・トリーティ
- 日本生命保険
三菱電機
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- SSBTCクライアント・オムニバス
- 日本カストディ銀行(信託口)
- 明治安田生命保険
- 自社グループ社員持ち株会
ダイキン工業
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 日本カストディ銀行(信託口)
- 三井住友銀行
- JPモルガン・チェース・バンク
- 日本カストディ銀行(農林中央金庫退職給付信託口)
TOTO
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 日本カストディ銀行(信託口)
- 明治安田生命保険
- TOTO(自己株口)
- 日本生命保険
LIXIL
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- JPモルガン・チェース・バンク
- 日本カストディ銀行(信託口)
- SSBTCクライアント・オムニバス
- 自社従業員持ち株会
タカラスタンダード
- 自社持ち株会
- タカラベルモントアセットマネジメント
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 自社社員持ち株会
- 日本カストディ銀行(信託口)
お気づきだと思いますが、全ての企業の上位の株主に『日本マスタートラスト信託銀行』と『日本カストディ銀行』という名前が入っています。それぞれ『パナソニックと三菱電機』や『TOTOとLIXIL』という企業は、本来競合企業なのですが、主要株主は同じなのです。ちなみに『日本マスタートラスト信託銀行』は社名に『日本』がついていますが、そもそもは日本企業ではありませんでした。ただ、現在の『日本マスタートラスト信託銀行』の主要株主は『三菱UFJ信託銀行』『日本生命保険』『明治安田生命保険』と続きます。株主が日本企業だから元々は外資だけど、今は日本の企業だよねと思いますが、深掘りすると少し変なことが見えてきます。
その会社がどんな会社かを見る時に『株主』を見ますが、より理解しようとするには、『株主』の『株主』を見る必要があります。そこで、三菱UFJ信託銀行の大元『三菱UFJフィナンシャルグループ』の株主構成を見てみると
三菱UFJフィナンシャルグループ
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 自社(自己株口)
- 日本カストディ銀行(信託口)
- SSBTCクライアント・オムニバス
- BNYメロン・フォーでポジたりーレシートホルダーズ
となり、ここで
日本マスタートラスト信託銀行<三菱信託銀行<日本マスタートラスト信託銀行
というように、結局、日本マスタートラスト信託銀行に戻るという不思議な構図が成り立ちます。
また、『日本カストディ銀行』の主要株主は、三井住友トラスト・ホールディングス、みずほフィナンシャルグループ、りそな銀行と続きました。同じように、三井住友トラスト・ホールディングスの株主構成を見てみると
三井住友トラスト・ホールディングス
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 日本カストディ銀行(信託口)
- 自社(自己株口)
- ノーザン・トラスト(AVFC)シルチェスター
- ステート・ストリート・バンク・ウエスト・トリーティ
という具合で、
日本カストディ銀行<三井住友トラスト・ホールディングス<日本マスタートラスト信託銀行
ここでも日本マスタートラスト信託銀行に繋がるという構図になります。
もう勘の良い方はお気づきかと思いますが、日本カストディ銀行の他の主要株主である、みずほフィナンシャルグループ、りそな銀行についても見ていきましょう。
みずほフィナンシャルグループ
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 日本カストディ銀行(信託口)
- ステート・ストリート・バンクk・ウエスト・トリーティ
- JPモルガン証券
- JPモルガン・チェース・バンク
りそなホールディングス
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)
- 日本カストディ銀行(信託口)
- 第一生命保険
- 日本生命保険
- ステート・ストリート・バンクk・ウエスト・トリーティ
ちなみに、りそなホールディングスの3番目、4番目の株主についても見てみます。第一生命保険の主要株主の上位2社は、日本マスタートラスト信託銀行と日本カストディ銀行で、日本生命の主要株主の上位2社は、日本マスタートラスト信託銀行と東洋紡です。そして、東洋紡の主要株主の上位2社は、日本マスタートラスト信託銀行と日本カストディ銀行となっています…。
この構図を見ると主要株主の実態がわからないというのが、日本の大手企業の現状なのです。確かに日本の年金機構のお金が日本マスタートラストや日本カストディ銀行にて運用されている側面もあるので、全てのお金の出所がわからず、おかしいわけではないです。ただ世界中の投資家によるお金が、日本企業の株主の背景になっています。では、その投資家が誰なのか、その実態は表には見えないようになっており、多くの日本企業の実態は実は不透明なものになっています。
日本企業の賃金が30年も上がっていないというのは周知の事実です。その背景にもこうした企業の株主構成の変化も影響があるのではないでしょうか。また、ムーンショット目標という日本政府が掲げる2050年までの目指す姿を推進していくことに欠かせない日本の大企業は、株主の実態が不透明なのです。テレビやラジオなどのスポンサー企業もこうした大企業が主体です。日本経済を動かす実態は、私たちには見えないようになっているのです。この背景を理解するには、世界の実態と歴史を見ていくことで浮かび上がってくる事実もあります。
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