今回は、茂木誠著『日本人が知るべき東アジアの地政学』を読んでの感想です。
2025年、南北朝鮮は統一している!
PHPホームページ 解説より
ニュースではわからない各国の思惑を「世界史×地理×イデオロギー」から完全予測!
国際情勢が混迷する中、日本は近隣諸国とどう付き合えばよいのか。
大人気予備校講師が世界史の教養から、米中覇権戦争と半島情勢を大胆予測!
日本の国益を守りつつ、無用な紛争に巻き込まれないための方策とは?
(項目例)
●地政学でなぜ国際情勢がわかるのか
●東アジアで交錯する「八つのイデオロギー」
●半島国家・ギリシアに酷似する朝鮮半島
●ロシアと中国は永遠の仮想敵同士
なぜ中国は海へ出ようとするのか、なぜ韓国は「反日」が国是となってしまったのか、台湾はどこへ向かうのか、ロシアは何を考えているのか──その根本部分から理解しておけば、目先のできごとに右往左往しなくなります。本書は地政学という観点から、東アジアのプレーヤー七カ国の動きを読み解いたものです。地理的条件は不変ですから、未来予測もできるのです。(「文庫版あとがき」より)
本書は、地政学の観点から欧米や特に東アジア諸国についての歴史や戦略について解説し、また、そうした近隣諸国の情勢を理解した上で、今後の日本の在り方について論じています。
私は、外国のことを考えるとき、知らず知らずのうちに日本との関係性を基準に考え、また思想、観念、主義を軸にそれぞれの国のことを捉えていたのだと、本書を読み気付かされました。
それぞれの国の地理的要因によって課題となる問題点も大いに異なりますし、またどういった地理的環境の基で、生きてきたのかによっても国民性の違いというものは、生まれてきます。単に資本主義や社会主義といった話だけではなく、地理的要因によって、違いが生じてくるのは当たり前のことだと、納得しました。
地政学の分類で大きく2つにわかれる特徴がありますが、それは『ランドパワー(大陸国家)』と『シーパワー(海洋国家)』というものです。そしてこの地理的条件から生まれる分類が国民性にも影響しています。
本書の説明によると、『歴史的に、海外との商業ネットワークに依存する島国は航海の自由を求め、シーパワーを志向』し、『人口に比べて広い領土を持つ国は、外部に商業ネットワークを求める同期に乏しく、自分たちの版図さえ守れればいいということになります。的が攻めてくれば自国領内の戦いに引きずり込み、消耗戦での勝利を目指す陸軍国を志向』するとのことです。
ちなみに、『ランドパワー』は各国の長い歴史の中において、本来『ランドパワー』的な国家が、『シーパワー』的な戦略をとってきたこともありますが、この場合は、失敗していることが多いようです。
また、『シーパワー』の国家は、歴史的に侵略を受けることが少なく、『ランドパワー』の国家は侵略を受けることが多かった。そして、その地理的要因による歴史を背景とし、その地域におけるイデオロギーが生まれます。だからこそ、近隣諸国の国であっても、相互理解が難しいのは、こうした地政学的要因が大きいのだろうと思います。その違いがあるということを認識した上で、国家間の主張の違いを理解していくことが必要なのだと思いました。
かつて、栄光ある孤立といわれてイギリスが、日本と同盟を結んだのも、同じシーパワー国家であり、それぞれの対ロシアという思惑や利権がうまく合致したからであり、今また、イギリスが日本に秋波を送っているのは、シーパワー国家として、対中国という戦略において一致することが多いからではないでしょうか。しかし、同じランドパワー同士の中国とロシアは対立構造が生まれやすい。これは、接近している『ランドパワー国家』同士は、利権が衝突しやすいからであり、海に囲まれているから、侵略を受けにくい『シーパワー国家』との違いとして、なるほどと思うものでもあります。
ただ、近年、『ランドパワー国家』の中国は、『シーパワー』戦略も同時にとっています。過去、こうした『ランドパワー国家』の『シーパワー』的戦略や、逆に『シーパワー国家』の『ランドパワー』的戦略はうまくいかなかったことも多いため、どこかに無理が生じてくるのかも知れません。
また、本書では、2025年南北朝鮮は統一している、という衝撃的な主張をしています。朝鮮半島は、『ランドパワー』国家です。過去、大陸勢力の影響を大きく受けており、そうした地理的、歴史的背景において形成されたイデオロギーは、中国『明』との冊封体制において広がった朱子学の影響が大きいと本書では述べられています。そして、『明』が夷狄である『清』によって滅ぼされたとき、朝鮮は、表面的には『清』に服従しながらも、面従腹背の姿勢で、『明』亡き後の文明の継承者であるという自負のもと、『小中華』思想が生まれ、現在のイデオロギーの根幹になっていると本書では述べられています。では、北朝鮮と韓国とどちらが主体となって統一するか、といえば『北朝鮮』が主体となるそうです。都市伝説界隈でも、同じように『北朝鮮』による朝鮮統一がシナリオであるかのように言われているのを見聞きしたこともありますが、この『小中華思想』から考えると、北朝鮮の主体思想というものが、朝鮮半島という地政学的要因から考えると、しっくりする思想なのかもしれないな、と思いました。日本から見る朝鮮半島ではなく、朝鮮半島における中国や日本、ロシア、アメリカを考えたとき、異国勢力に影響を受けない、朝鮮民族が主体となった国家は、地政学的に育まれたイデオロギーと合致する気もします。そして、米中対立やロシアとの関係などを考えたとき、日本を含めた東アジアの情勢において、朝鮮半島の立ち位置は、かつての歴史と同じようになるのか、どうかという分岐点に立つのかも知れません。
そんな東アジア情勢において、日本のとるべき道は、『シーパワー国家』を貫くことだと著者は主張しています。他の『シーパワー国家』との関係を強化し、また本当の意味での独立が必要だと私も思います。国連憲章において、日本は今も『敵国』として扱われています。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国が常任理事国となっている国連では、この常任理事国に拒否権があります。そのため、尖閣諸島における問題は、国連において拒否権を持つ中国との問題でもあり、日本にとっては非常にリスクがある状況でもあります。
世界情勢は緊迫したものになってきています。そんな中、日本を、日本人を守るためにも『国家』の在り方について、しっかりと示すべきです。そんな政治的リーダーを求めながらも、自分ができることを実行していきたいとも思う読書となりました。
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