人生に悩みはつきものです。そして、悩みと聞くと何かマイナスのイメージを持つことが多いかも知れません。ただ、決して悩みがあることが悪いことではなく、悩みがあることで、色々な選択肢を考える機会にもなり、新たな発見があることも事実です。悩みがあるからこそ、新たな自分を作り出し、自身を成長、進化していくことができるのかもしれません。
でも、そうは言っても、自分が苦しくなる悩みは抱えたくないものです。今回は、そうした苦しい悩みを消す方法についてヒントを与えてくれた『反応しない練習』(草薙龍瞬著)を読んで学んだことから、悩みを消す方法をご紹介させていただきます。
ブッダは実は「超クール」――毎日、ムダな「反応」をしていませんか?
悩みは「消す」ことができる。そしてそれには「方法」がある――ブッダの「超合理的で、超シンプル」な教えを日常生活に活かすには? 注目の“独立派”出家僧が原始仏教からひもとく“役に立つ仏教”。
KADOKAWAホームページより
悩みの正体は心の反応から生じている
どんなことでも、根本となる原因を見つけることが本当の問題解決へとつながりますが、悩みを消すためには、まず悩みの『正体』を理解する必要があります。そして、自分が苦しむ悩みの『正体』は、自分の『心の反応』から生じていることを認識することから始まります。
悩みにつながる、怒りや不安、そうした心が反応してしまう感情の根本は、自分の心の欲求にあります。人は生きている限り、さまざまな感情が沸いてきますが、この感情は自分の欲求がもたらしているものであり、悩みをもたらしている人の欲求で最も影響を及ぼしているのは、『承認欲求』です。
子供の頃は、『親に愛されたい』というような素朴なものから始まり、成長するにつれ、『褒められたい』とか『人気者になりたい』というものになり、大人になっていくと、『出世したい』や『勝ちたい、負けたくない』といった、上昇欲や優越感、プライドといったものになります。そして、そうした欲が満たされないときには、劣等感をもつことにもなります。つまり、自分の『承認欲求』を外に向けたとき、この承認欲求が満たされないことに対しての心の反応が、悩みをもたらす根本原因になっているのです。
ここで大切なことは、この反応に善悪はない、ということです。承認欲求は人として生きている限り、必ずあります。なので、承認欲求を否定する必要は全くありません。承認欲求があることを、ただフラットに自分で認めることができれば、自分の悩みを消すことに繋がっていきます。決して、誰か他の人が原因で悩みが発生しているわけではなく、悩みの根本は自分自身の承認欲求にあるのだ、と認識すれば良いのです。
判断しないことで悩みから離れることができる
『判断しすぎる心』もまた、悩んでしまう一つの理由になります。正しい・間違っているとか、意味がある・ないとか、優れている・劣っているとか、好き・嫌いとか、人は色々な判断を繰り返しています。判断することで自尊心を高めることもあれば、自分を傷つけることもあるでしょう。判断することで勇気がでることも、落ち込むこともあるでしょう。判断をすることは、私たちの心を大きく揺れ動かします。人生において、判断をすることは大切なことでもありますが、無駄に判断しすぎると、悩みを生み出す原因にもなってしまいます。私たちの人生は、こうした『判断』に支配されていると言えるのかもしれません。
ところで、私たちは何を基準に『判断』をしているのでしょうか。ここで私たちは、自分の悩みや人生をも支配する『判断』の基準が、自分の頭や心から生まれたものではなく、実は、『外的な要因』によって形成されてきたことを理解する必要があります。
世間の常識や世の中の平均やモデルケースというものをどこかで、意識しているかもしれません。そうした基準と比較して、自分は…あの人は…といった具合に何かの判断をしていないでしょうか。そして『こうでなければいけない』と考え、そのことと自分とのギャップに喜んだり、落ち込んだりと。喜んでいる内は気分が良いのかもしれませんが、この判断によって苦しむことも多いのかも知れません。そして、悩みに苦しんでいきます。
こうした苦しみは、結局のところ自分の頭の中で作り出した妄想によって生み出されたものです。『こうではなければならない』という判断により、自分が苦しむのであるならば、その妄想から離れることが大切です。
妄想の世界ではなく、今を生きる
苦しみを生む『判断』も結局のところ、自分の『欲(多くは承認欲求)』がつくりだしています。ただ『欲』を捨てるとか、抑えるのではなく、『欲』があることを認めることが大切なことなのかも知れません。そして、自分は『欲』に反応したと認識していければ良いのです。
『欲』は決して全てが悪いものではありません。『欲』があることで人生に喜びをもたらしていることもたくさんあります。自分の『欲』と上手につきあうことができれば、人生の苦しい悩みを消していくことができるようになっていけます。
『欲』が生み出す『妄想』も全てが悪いわけではありません。妄想することで、良いイメージを持ち、人生が好転することだってあります。そんな妄想は大いに楽しめば良いのですが、苦しくなる妄想をしているときには、自分の心が、何かの自分の欲が原因で、反応していることを認識し、現実ではなく自分の心が作り出した妄想に過ぎない、そして妄想は確かめようがないことだと理解し、今を生きること、例えば見える物や聞こえる音などの五感に意識を向けるなど、今の現実に意識を持っていくようにするなど、心の反応をやめていく練習をしていくと、苦しい悩みが消えていくようになります。
自分軸を持つ
ただ、人生を生きていくと、どうしても自分の欲により、心が反応してしまうことはあります。また、世の中にあふれる情報に無意識のうちに、価値観を植え付けられてしまうことも大いにあります。そんな世の中を幸せに生きていく上で大切なことは、『どんな心で現実を生きていくのか』ということにあると思います。つまり、自分の軸を持つことです。
本書では、ブッダの教えから、4つの心掛けとして慈(じ)・悲(ひ)・喜(き)・捨(しゃ)の心がけを説いています。
- 慈は、自分の都合や欲求を満たすことではなく、純粋に相手の幸せを願う心
- 悲は、『相手の苦しみ・悲しみをそのまま理解、共感する心
- 喜は、相手の喜び・楽しさをそのまま理解、共感する心
- 捨は、欲や怒りの心に気付いてストップさせるといった手ばなす心や反応しない心
結局のところ、人はそれそれ妄想の世界に生きながら、他人と交わっているのかもしれません。物質的には同じ世界に住んでいるようですが、実は精神的には別の世界を生きているのです。ならば、まずは自分の考えや生き方をしっかり自分で認識していくことからはじめていき、他人との関わりにおいては、互いに幸福になれる関係を気付いていけるようでありたいものです。他人に期待するのではなく、自分を生きながら、他人と幸せに生きていく、そんな生き方ができるようであれたら、と思います。
自分の心の反応を客観的に見つめていくと、自分のことが理解してきます。自分は何がしたいのか、どうありたいのか、そうした必ず持っている自分の軸に気付き、それを大切にしていくことが、人生を豊に幸せにしていく根本ではないかと思います。そうなれるよう、『反応しない練習』を重ねていき、自分軸をもって、活き活きとした人生になっていければ、と思います。苦しい悩みから離れたい人には、ぜひおすすめの一冊です。
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