今の資本主義システムは限界にきている
日本は人口減少社会に突入しています。様々な要因もあり、2022年には、戦後最多の158万人以上が亡くなりました。逆に出生数は過去最少の77万人と、初めて80万人を下回っています。したがって、日本の人口は81万人が減少しました。これは、山梨県や佐賀県に住む人口とほぼ同じくらいの規模です。1年で1つの県の住民が全ていなくなる速度で、この国は人口が減っています。このように、私たち日本社会は、人口減少という過去に経験のない時代へと突入しています。
人口減少は多くの社会問題を引き起こしています。例えば空き家問題などもその1つです。2018年の調査で、日本の住宅数6,240万戸のうち、13.6%の846万戸が空き家です。それにも関わらず、日本の住宅総数は増え続けています。この背景も、利益を追求していかなければいけない現在の資本主義の考え方・仕組にあります。人口が減少しているにもかかわらず、常に増収増益の事業計画を立て、それを実行しようとするのが資本主義における企業の在り方です。人口減少という未知の時代にいるにも関わらず、社会問題の解決に目を向けるのではなく、成長続けることを前提とした旧来型の資本主義の考え方による、企業の、株主の利益を追求した経営計画が実行されているのです。
SDG’Sという名の下で、国連主導の持続可能な開発目標が進行中ですが、実際にはビジネス的要素が強いです。確かに、持続可能な循環型社会の実現は多くの観点からも必要なことです。しかし、SDG’Sのような施策は、食糧不足の解消にコオロギといった昆虫食を進めるといった具合のように、新たな利権を生み出すような施策や、薬やワクチンなどでもあるように、大きな利権が絡み合った施策が実行されています。美辞麗句を並べても、志や実態は、一部の富裕層にとって有利に働く、強欲な資本主義による進め方です。これでは、本当に子ども孫の世代が住む社会を幸せに導くものなのかと疑問を持たざるを得ません。
金融や財政を意味するファイナンスという言葉の語源は
世界人口の1%にあたる超富裕層が保有する資産は、それ以外の99%の人々の資産全てを合計したよりも多いと、『オックスファム』というイギリスのNGO団体が発表しました。コロナ禍で、その格差はさらに広がったそうです。そして、彼らの資金は、様々な形で政財界に大きな影響を与えています。世界の紛争だって、ビジネスとして考えているような人たちの思想で、この世界は動いているのかもしれません。
残念ながら、日本の、いや世界の経済構造は利益第一主義で動いていますが、そもそも金融や財政を差す言葉である『ファイナンス』は、終わらせるという意味の『フィニッシュ』に由来しています。これは取引や関係を終わらせるという行為を意味しています。また更には、市場(マーケット)は商いが行われるところですが、ここはお互いのことを知らなくても成り立つ場所でもあります。つまり、お互いに知らない場所で、お金によって関係を終わらせる行為が現代の経済活動の中心的な特徴です。
大きな会社だから『安心』という言葉を私もお客さまから聞くことがあります。私は、この言葉は本当だろうか、と疑問に思うことも多いです。最近では中古車販売最大手の某企業がニュースを賑わせました。JAによる産地偽装米の問題なども、まさかと思うようなニュースでした。私も取引の関係で大企業との関わりを持つこともありますので、一概に大企業の全てが悪いわけでなく、そこで働く人たち、一人ひとりは本当に優秀で良い人も多いことも事実です。でも、融通が利かないこともあり、そこには企業の方針というものが介入しています。
大企業は、もちろん大きな存在価値があり、私たちの生活において欠かせない企業であることも間違いありません。ただ、先述の通り、多くの企業は利益を追求することが目的であることも事実です。そして、利益を追求するあまり、モラルハザードという『倫理観の欠如』が起こっていることも事実です。
そう考えたとき、私は経済活動において、『お互いを知っている』という関係が『安心でできる取引』の大切な要素になるのではないかと思います。つまり、『マーケット』という市場ではなく、『コミュニティ』という共同体を大切にしていくことが、これからの人口減少時代において、必要な要素ではないかと考えます。
グローバルという視点だけでなく、地域コミュニティという視点も必要
世界はグローバル化へと進んでいます。そのうち『世界統一政府』なんて構想も更に進んでいく可能性も高いようです。でも、よく考えてみてください。グローバル企業の拡大によって経済格差も大きくなっており、便利なようで困った時には不便になっていることも多いことも事実なのです。
本当に困ったとき、人と人との繋がりということの有り難さに気付くことも多いです。私も阪神淡路大震災を体験しましたが、過去の歴史や災害を振り返ってみても、大きな組織による力だけでなく、地域や人と人とのネットワークの大切さを感じる人も多かったのではないでしょうか。
日本経済が成長していった過程において、昔ながらの商店街はなくなっていきました。地域密着のお店というものも減少していっています。私が子どもの頃は近所の知らないおじさん、おばさんが私のことを知っていたりもしました。商売においても私生活においても、人と人との繋がりというものが強かったように思い出します。実は、世界で幸福度の高い北欧の国々では、人と人との繋がりが強いそうです。江戸時代の頃の日本も、見た目には貧しそうな人たちでも幸せそうに生活していたと、当時日本に来ていた西欧人の日記に記されてもいます。精神的な豊かさというものは、物質によるものではなく、繋がりによって生み出されるものではないでしょうか。
現在の人口減少時代において、人と人の繋がりや地域コミュニティを再評価する必要があると思います。そして、会社の株主が個人であることが多い地域密着企業は、地域社会に安心感を提供し、人口減少時代において重要な役割を果たす可能性があると考えます。もちろん、そのためには経営者自身の人間力を高めることや、経営姿勢を見直し、磨き続ける必要があるでしょう。さらには、そこで働く従業員も同様に、自分たちが地域社会の幸福に繋がる一翼を担うという志の醸成も必要かもしれません。私自身も地域密着企業の経営者という立場から、人口減少時代のこれからの社会において、何か一筋の光明となれるような会社経営をしていこうと考えます。
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